<特集>  大新東…路線バス新参事業者解体新書


レイディアントシティの
大規模マンション群を背に
 レイディアントシティ営業所に集う
大新東のバスたち
日中は2台使用(うち1台は車庫待機)
のため、このように車庫では常時
5台以上の車両が顔をそろえる

 2002年の規制緩和によって路線バス事業の参入が自由化され、法制上は路線バス事業の経験がない事業者でも容易に乗合路線を運行できるようになったが、しかしながら今日に至るまで 実際に既存の路線バス事業者とは一切関係を持たない事業者が路線バス事業を立ち上げた例は全国でも僅か数例にとどまる。その理由についての詳述は割愛するが、そのような状況の中で路線バス事業に新たに参入した僅か数例のうちの一つがこの大新東である。
 横浜市金沢区内、文庫駅西南方に位置する大規模マンション街区「レイディアントシティ横濱」の開発に伴い、同街区と金沢文庫駅を結ぶ公共交通として路線バスの運行が必要となったが、運賃や計画便数等既存の他社より有利な条件を提示することにより同社初の乗合バス路線がこの金沢区に誕生することになった。レイディアントシティの開発進行に伴い、2004年4月に同地区と金沢文庫駅を結ぶ2路線の運行を開始している。
 完全な新参事業者のため良くも悪くも従来の路線バスの常識を越えた存在となっており、鉄道並みの運行時間帯幅や給油・車両整備の体制、取扱乗車券の種類など特筆できる項目は非常に多岐に渡る。それらの詳細を以下に紹介する。

[在籍車両一覧]
登録番号 メーカー・形式
 横浜200 あ ・・・1   いすゞKK-LR233J1 
 横浜200 あ ・・・2   いすゞKK-LR233J1 
 横浜200 あ ・・・3   いすゞKK-LR233J1 
 横浜230 あ ・・・4   いすゞKK-LR233J1 
 横浜200 い ・・・5   いすゞPJ-LV234L1 
 横浜230 い ・・・6   いすゞPJ-LV234L1 
 横浜200 い ・・・7   いすゞKL-LV280L1 
1〜4は中型ワンステップ、
5〜7は大型ノンステップ
全車LED・スロープ装備


在籍全車写真
   <営業所数1、運行路線数2、車両数7の極小規模事業者>

 既述の通り運行路線は大規模マンション街と金沢文庫駅を結ぶ2路線(上下で経由・街区内停車順が異なることによるもので、実質は1系統)のみであり、高頻度運転を行いながらなおピーク時にはどの便も満員となる超優良路線であるものの、路線長が短いため所有車両数も7台と法令上路線事業に最低必要な台数を辛うじて満たしている状況である。マンション街区北側・カルティエ5〜カルティエ4間に門を構えるレイディアントシティ営業所を拠点に、この1系統2路線を7台の車両で運行する。
 車両はいずれもいすゞ純正車で、中型のエルガミオワンステップ車が4台と大型のエルガノンステップ車が3台在籍しており、いずれも特に区別されることなく共通の運用に就いているが、日中は多様な利用者層を考慮してかノンステップである大型車の使用が中心である模様。開業から僅か2年強でありながら既に車両の置換えが数台分実施されているが、運用から退いた車両についての消息は不明である。


[路線一覧表]
01


02

金沢文庫駅西口  
白百合幼稚園  
レイディアントシティカルティエ4前  
レイディアントシティカルティエ2前  
レイディアントシティカルティエ3前  
レイディアントシティカルティエ5前  
白百合幼稚園  
金沢文庫駅西口  

   <マンション〜駅間のドル箱路線は鉄道並みの運行時間帯>

 駅方面行の金01系統・レイディアントシティ方面行の金02系統(系統番号の表示はない)とも全長3km未満・所要時間約10分で、短距離な上 マンション輸送を一手に担うためかなりの優良路線である。ピーク時には5分間隔・データイムも15分間隔と終日高頻度運転を行っていることも既に述べたとおりだが、運転時間帯が始発は5:00過ぎから最終は1:00近くまでと通勤電車と遜色ないくらい広い時間帯に渡っていることも同路線の大きな特徴である。もちろん深夜バスという概念はなく、運賃も1:00近くの最終便まで全て¥170均一。定期券・回数券(発売¥2,000で¥170×13枚)も販売しているが、バス共通カードの取扱はない。
 金沢文庫駅の乗り場はロータリーの既存他社乗り場から少々旧道奥側に位置しており、新道側から駅に入る金01系統がここで降車を扱った後すぐに金02系統として乗車も扱いここから旧道方面へ発車する。金01→02の運用は一体となっており駅での待機は設定されておらず、また新道旧道含め各区間とも京浜急行の路線・停留所が存在するが大新東は停留所を持たないため駅の次はレイディアントシティ手前の白百合幼稚園まで停まらない。新道・旧道が合流する赤坂からレイディアントシティの入口までは両系統とも同じ道を走行するが、宮ヶ谷手前の交差点を鋭角に曲がり一つ目の停留所:白百合幼稚園へ向かい、その先を左折してトンネルをくぐるとレイディアントシティである。路線は街区内道路を1周するが、出庫の01系統・駅からの02系統とも街区内はカルティエ4〜2〜3〜5の順に停車し、その後01系統は駅へ・02系統は入庫となる。
 駅付近について上記のような運行形態となったのは新参事業者のためロータリー内に乗り場が持てず、そのため新道・旧道を利用しての折返し形態となったとの由。待機もなしに1箇所の乗り場で乗降を同時に扱いすぐに発車となることから実質循環運行の様相を呈していると言えよう。

レイディアントシティ営業所の全景
駐車スペースの他には休憩室と思しき
プレハブと洗車設備(これ)しか
見受けられず、新参極小事業者を
象徴するかのような車庫風景だ
事務所等は別の場所に
設置されている模様
   <自前の設備を持てない給油・整備は外注が基本>

 通常車両数十台の在籍がある一般的な路線バス営業所では自前の給油設備・洗車機・整備ピットがあり、また派出などで在籍数が少ない常駐場所においても近隣の規模が大きい車庫へ出向けばこのような整備は自社設備で賄えるものである。しかしながら僅か7台の在籍ではそのような常識が通用するはずもなく、レイディアント営業所内にはこれら設備は一切ない。従って洗車は手洗いで、給油・整備は軽微なものから全て外注で行っている模様で、運用が減る日中には近隣のガソリンスタンドへ給油に向かう回送車の姿を氷取沢〜上中里方面で見ることができる。1路線のみの終点付近に営業所を有するため営業運転に付随する回送がほとんどないことも 如何にも小規模事業者を象徴するような事象であるが、「給油回送」が頻繁に見られるというのはなおのことである。


レイディアントシティカルティエ2前停留所で客扱いを行う文庫駅行
新興マンション街と新参事業者のバス、
如何にも近郊都市の「今」を象徴する
光景と言えるかもしれない

車庫を出る車両
この後駅行きとなり、レイディアントシティ
街区を一周して乗客を集めた後駅に向かう

上述の通り給油は外注のため、
一般の車に混じり何食わぬ顔して
ごく普通のガソリンスタンドで給油を行う

レイディアントシティカルティエ3前にて

レイディアントシティの入口にあたる
八景の杜トンネルを抜け、
文庫駅に向かう

レイディアントシティ内停留所での
乗車扱いを終え、文庫駅に進路をとる
上り便  左写真の短いトンネルを抜けた
後はあと途中1停留所に停まるのみ


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(c)2006-2006 unatamadon85  最終更新日'06.11.30.
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